ARTIDA OUD

ARTIDA OUD

Journal

映像作家 / 佐渡恵理 × ARTIDA OUDディレクター・デザイナー / 安部真理子

interview

映像作家 / 佐渡恵理 × ARTIDA OUDディレクター・デザイナー / 安部真理子

淡い夕日の橙と、建物の灯りがきらめく夕刻の水面。

ふたりの出逢いは、まだARTIDA OUDが世に出るまえ。ブランドの世界観を表すムービー撮影を行ったインドで、映像作家の佐渡恵理と、ARTIDA OUDの安部真理子は初めて同じ時間を過ごした。

当時佐渡は、島田大介率いる映像ディレクションカンパニー「コトリフィルム」に所属。これまでARTIDA OUDのインタビュー連載「Journal」にも登場したCharaなど名だたるミュージシャンのPVや、大手企業のCMを手掛け、日本の映像業界を牽引するプロダクションで注目の映像作家として活躍していた。

一方安部は、サザビーリーグの別のブランドに所属しながら1年半ものあいだブランドコンセプトなどを構想し続け、ARTIDA OUD立ち上げのために力を尽くしていた

映像とジュエリー…フィールドは違えど、仕事に想いを乗せる姿には、ARTIDA OUDがテーマに掲げる「raw beauty=ありのままの美しさ」が静かに光る。

ふだん表に出ることのないふたりが、映像について、ARTIDA OUDについて、心に秘めた想いを語る。安部が佐渡を「親友に似ている」というよう、どこかずっと昔からお互いを知っているような、打ち解けた雰囲気の対談をどうぞ。





それぞれが歩む、映像とジュエリーの道


―――昨年12月に、コトリフィルムが主催するトークイベント「Qotorinicle exhibition」に安部がお招きいただいたんですよね。

佐渡さん:はい。去年コトリフィルムは解散したのですが、最後に、これまでご一緒したさまざまなクリエイターの方をお招きするイベントを開いて、そこにお越しいただきました。安部さんと、スタイリストの遠藤リカさん、ダンスパフォーマーのホナガヨウコさん、そして私という4人でお話したんですよね。

安部:私たちの翌日の回には、「Journal」で取材させていただいたフラワー・クリエイターの篠崎恵美さんも登壇されていました。みんなが繋がっている感じがして、嬉しいです。あのイベントをきっかけにもっと佐渡さんにお話を伺いたいと思い、今回の対談をオファーさせていただきました。

―――改めての質問なのですが、佐渡さんはどうやって映像監督になられたのですか?

佐渡さん:ロンドンの大学で映像の勉強をしてから、東南アジア(タイ、ラオス、カンボジア、インドネシア)でバックパッカーをしました。初日に携帯をなくしてしまい困ったのですが、携帯がなかったからこその出会いがたくさんあって、逆によかったのかもしれないです。帰国後、仕事を探すなかで作品に惹かれて2011年に「コトリフィルム」という映像ディレクター集団に入ったんです。



ARTIDA OUDが誕生するまで

佐渡さん:ARTIDA OUDは、どうやって立ち上げられたんですか?

安部:「やりたいです!」って手を挙げたんです。そのとき抱えていた仕事をしながら、まわりの方の支えもあり1年半かけてサザビーリーグでプレゼンを繰り返しました。

佐渡さん:1年半!長いですね…!どんな内容をお話するんですか?

安部:振り返るとあっという間なんですけどね、構想やブランドのコンセプトなどを話しました。それこそインドのジャイプールで職人さんや世界中から集まった天然石などを撮影し、ARTIDA OUDが始まるまえから、一緒にブランドの世界観を作っていただきました。



佐渡さん:私は民族衣装が好きでエスニック雑貨店でアルバイトをしていたことがあったので、「インドに行きたい!」っていう理由でご一緒させていただいたんです(笑)。まさかARTIDA OUDの誕生に携われていたとは驚きです。
安部:最後のプレゼンであのムービーを見せて通ったんですから、佐渡さんはARTIDA OUD誕生の立役者のひとりですよ!初めてジュエリーのサンプルを作りに行ったときもそうですし、ローンチのだいぶまえから、いろいろな初めての瞬間をご一緒いただけて心強かったです。

―――ムービーはブランドローンチまえに作られたということですが、まさにARTIDA OUDの世界観を反映していますよね。イメージのすり合わせなど細かくされたのですか?

安部:それが、あのときは本当に「初めまして。はい、インドに行きましょう!」っていう感じのタイトなスケジュールだったので、お任せしすぎてしまい申し訳ないくらいだったんです。でも結果として、まわりの方にイメージが伝わるムービーが出来上がりました。「これってARTIDA OUDらしいよね」って好評で。アコヤパールのシリーズがあるのですが、まだジュエリーが出来るまえに撮影したムービーもそうですね。佐渡さんは、言葉で伝えるのが難しい感覚やイメージも、映像で表現してくださるんです。

佐渡さん:そう言っていただけると嬉しいです。



―――これを作った当時、佐渡さんはコトリフィルムに所属されていましたが、コトリフィルムは去年、スタートから10年を機に解散されて。

佐渡さん:はい。もともと、フリーランスの集団みたいな感じだったので大きな変化はありませんが、本当にいろんなディレクターがいたので、刺激を受けましたね。

安部:佐渡さんはどういう制作に携わられてきたのですか?

佐渡さん:ふだんは広告やミュージックビデオの演出が主ですね。自主制作は何年かまえ、アシスタントをしながらスタイリストの遠藤リカさんとコラボして作りました。

安部:これですね。独特な世界観が面白くて、佐渡さんらしい感じがします。

「ROSE展 特別なワンピースをすべての女の子のために」


佐渡さん:これはフィルムで撮ろうって決めて撮りました。あと絵画みたいな映像を作りたいっていうのが、ずっとやりたかったことだったんです。スタイリストさんと話したときに「最近何ハマってる?」みたいなところから入って、占い、タロットとかが好きという話題になって。好きなものを反映した映像にしようと。絵画のように、視覚で訴える作品にしたかったんです。

安部:好きなアート作品って、どんなものがあるんですか?

佐渡さん:昔の作品なので実物は観たことがないんですが、オノ・ヨーコさんの有名な『天井の絵』という作品が好きですね。脚立に登った人が、吊るされている虫眼鏡で天井に書かれてる文字を読むんです。天井には「YES」って書いてあって。私は悩みがちな性格なので、そうやって誰かを肯定するような作品はすごく好きで、勇気づけられます。

―――『天井の絵』は、ジョン・レノンがオノ・ヨーコに恋するきっかけになった作品ですよね。作品ひとつで運命が変わるなんて、ロマンチックで素敵です。





言葉から受けるインスピレーション

―――インスピレーションの源って、何かありますか?

佐渡さん:この話題、撮影のときに現場で安部さんと話しましたね。

安部:うんうん。ARTIDA OUDは、ありのままの自然をテーマにしています。ユーラシアの旅や、自然が生んだ原石やアコヤパール、そんなものからインスピレーションを受けていますね。あと最近は、詩を読んで影響を受けることが多いです。私の場合、絵よりも言葉のほうがイメージがわきやすい気がします。

佐渡さん:私もそうかもしれません。絵画とか詩とか、刺激を受けますね。絵画の構図とか、こういう映像を作れたらいいなとか。インスピレーションというか、イメージのヒントですかね。安部さんは、どんな詩を読まれているんですか?

安部:実は今日、何冊か持ってきたんです。

佐渡さん:わ、すごい。



安部:英語ですけど、分かりやすいんですよ。フランスのポール・ヴェルレーヌや、古代ギリシャの女性詩人・サッポーなどを読みますね。私は断片的なワードを追いかけたりしているんですけど、美しい響きがいいなと思って。最近は『ギリシャ・ローマ名言集』にもハマっています。

佐渡さん:何かお気に入りの言葉はありますか?

安部:私が最近気に入ってる格言なんですけど、「もし1年を通して太陽の日と雲の日を数えてみれば、晴れた日のほうが多かったということがわかるだろう」。オウィディウスっていう人の言葉です。これちょっと泣きそうになりませんか?

佐渡さん:素敵ですね、読んでみたいと思います。私は、さっきもお話にあがったオノ・ヨーコさんの『グレープフルーツ・ジュース』っていう詩集に衝撃を受けて、ずっと好きですね。好きな本とか、その時その時で変わっちゃってすぐ忘れちゃうんですけど、これは今でも覚えています。言葉による指示が続く詩集なんですけど、最後は「この本を燃やしなさい。読みおえたら。」というワードで締めくくられていて。すごくいいなあと思って、たまに読み返します。

―――ジョン・レノンは『グレープフルーツ・ジュース』の影響を受けて、THE BEATLESの名曲『Imagine』を生み出したとも言われていますよね。

佐渡さん:はい、いま読んでもまったく古くない本です。ぜひ読まれてみてください。

安部:ARTIDA OUDは「raw beauty=ありのままの美しさ」をテーマにしているんですけど、そういう意味ではどなたか浮かびますか?

佐渡さん:若いうちは存在やパワーだけで、もうありのままで美しいと思うんです。でも年齢を重ねていくにつれ、内面からにじみ出るものが大切だなあって。

安部:私はありのままの美しさと聞いたときにサッポーが浮かびます。紀元前に活躍していた類稀な女性で、自由気ままに美しい言葉を紡ぐところに惹かれますね。これからも読み返していきたいと思います。





美しい海に、素直に感動できなかった。抱えるプレッシャー

安部:最近、感動した瞬間ってありましたか?

佐渡さん:私、基本的にマイナス思考なので感動することが少ないんですけど…(笑)。このあいだロケハンに行ったとき、すごい渋滞でスケジュールが押していたなか私の希望で閉店しているスポットにも足を運んだんです。美味しい食事を食べるはずがコンビニのお弁当になっちゃって、スタッフさんに申し訳なくて。でも私は立場上、毅然としていようって気を張っていたんです。そんなとき、ふとバスから外を見たら海がとてもキレイだったんですよ。でも…何だか複雑な気持ちになってしまって。素直に感動できなかったんですよね。

安部:佐渡さんはしっかりされている印象ですが、とても繊細なんですね。仕事を通じて自分の表現をされる大変さが伝わってきます。

―――そんななかで、無邪気になる瞬間ってあるんですか?

安部:私もARTIDA OUDのすべてに携わっているので、日々プレッシャーを感じてはいますが、職人さんとARTIDA OUDのジュエリーを作っているときは純粋に楽しいですね。無邪気というか真剣なんですけど、職人さんや作り手の方々と、とりとめのない話をしている時間はある種の癒やし。根本に、職人さんへのリスペクトの気持ちがあって、その人たちから出てくる言葉は面白いなって。

佐渡さん:私もそういうお喋りは好きですね。一緒に伊勢志摩にパールの撮影に行ったときに、真珠職人さんとお話して。彼らは、1日の大半は一人なんですよね。ひたすら貝と向き合って、孤高で、格好いいなって思います。

安部:ARTIDA OUDの「ISSUE」に載せているのですが、間崎島の真珠職人の佐藤珠樹(たまき)さんは、40年ほどアコヤ貝の養殖に携わっていても、まだ貝のことをぜんぜん知らないと仰っていました。パールが出来るまで4年もの歳月がかかるのですが、真珠を育てる行程を貝の都合に合わせるようになってから、楽になったと伺い感動しましたね。明日も、間崎島に、佐藤さんに会いに行きます。自然界の神秘だと思いますし、パールや石、一粒一粒が持つ個性を大切にしていきたいです。

 


なりたい自分はないけれど、女性の心を打つものを作りたい

安部:佐渡さんってすごくストイックな印象なんですけど、なりたい自分や成し遂げたいものがあるんですか?

佐渡さん:私は先のことを考えて動くとうまくいかないタイプなので、理想の自分とかは考えずに、目の前の仕事を頑張るスタイルです。大学のころからビジュアル先行だったんですけど、メッセージもついてこさせたくて。今後の目標ですね。特に、圧倒的な映像とメッセージで女性の心を打つようなものを作りたいです。

 

日常で、非日常を楽しむ。慈善活動をファッショナブルに

安部:ARTIDA OUDも女性をエンパワーメントしたいと思っているんです。非日常の美しいジュエリーを日常でつけていただき、美しいきらめきを持ち続けていただければ嬉しいです。そして、美しいものを身につけることで世の中のためになることができればとも考えています。

佐渡さん:うまく言えないんですけど、私もドキュメンタリー的な映像も好きでありながら、相反する非日常の映像も好きなので安部さんの仰っていることは何となくわかります。ARTIDA OUDは、ドネーション活動をされていますよね?ジュエリーを買うと、世界の女性たちに寄付ができるとか。

安部:はい、力を入れています。私、大学時代にインド南部の村で先生のボランティアをしていた経験があるんですよ。そのときから、ドネーションをいつか実現させたいと思っていて。具体的には、ARTIDA OUDは国際NGOプラン・インターナショナルが展開するグローバルキャンペーン「Because I am a Girlキャンペーン」に賛同しています。さまざまなリスクから女の子を守り、彼女たちが生きる力を発揮できるよう促していきたいです。

佐渡さん:私もバックパッカーをしていて、インドは行っていないんですけどカンボジアとかに足を運んでいたので共感しますね。いつも非日常を作る仕事なのですが、現地でドキュメントを撮って、現地の方が観たときに感動するような映像を作りたいなとも漠然と思っています。そういう意味では、インドや伊勢志摩での撮影も、やってみたいことのひとつだったので、ご一緒させていただいてありがたかったですね。ほかにも、何か構想はあるんですか?

安部:今回のパールシリーズ“philia”の真珠を育ててくださった伊勢志摩の真珠養殖職人さんも、後継者がいないことが問題になっているんです。支援するだけではなく、私たちができることは自分たちの手で行い、皆さまに適正な価格で商品を届け、喜んで身につけていただくことで地域が活性化する、そんな循環を作れればと思います。またARTIDA OUDを通してパールの魅力に気づいていただいたり、間崎島の真珠養殖を取り巻く現状について知っていただくきっかけになれれば嬉しいです。





「できないかも」ではなく「できるかも」と思えば世のなかが楽しくなる

―――さまざまなフィールドで頑張る女性に、メッセージをお願いします。

佐渡さん:大それたことは言えないんですけど、「私にはちょっとできないかも」とか、自分の限界を自分で作るのはもったいないなって思います。諦めちゃうこともありますが、そこでも「やろう!」みたいに前を向けるようになりたいですね。「私にはできないかも」を、「私もできるかも」と思える女性が増えれば、もっと楽しい世のなかになるのかなって。

安部:私の佐渡さんの印象は、おっとりしているのにたくましくて、できないことを作らないイメージです。ムービー撮影のときもあちこちに自らずんずん歩いていかれて、予定にないシーンもストイックに撮影してくださって、嬉しかったです。

佐渡さん:使うかわからないシーンも、印象的なシーンになる可能性があるのでなるべく押さえておこうと思って。でも、安部さんもたくましいですよね。ほわっとしている感じだけど、お話していると芯の強さが伝わってきます。やっぱり内面の美しさって、笑う門には福来るっていうように笑顔にも出るじゃないですか。安部さんも笑顔を意識されていますか?

安部:そうですね、怖い顔にはならないように気をつけています。「Journal」で取材させていただいたとき、ミュージシャンのCharaさんも「女性は機嫌がいい方がいいのよ」って仰っていましたね。

佐渡さん:なるほど、なるべく笑顔で。心に留めます。最近、自分を取り戻すには、旅行がいいなっていうのがわかったんです。環境を変えるために、日本より海外に行くとすごいリフレッシュされる感覚がありますね。でも常に行けるわけではないので、休みがあったら美術館に行きたいです。安部さんはいかがですか?

安部:私も旅ですね。このあいだARTIDA OUDの香水を作りにイタリアのトスカーナに一週間ほど出張に行ったんですけど、モヤモヤしていたものが回復しました。またどこか一緒に行きたいですね、佐渡さんの目に映る特別な景色を映像にしていただけるのが楽しみです。クリエイターの方々と慈善活動をファッショナブルに表現できたら、もっと若い年齢の方にも裾野が広がると思いますし、世のなかの価値観が変わると信じています。



The moon has set and the stars have faded,
midnight has gone, long hours pass by, pass by;
I sleep alone

――Sappho







PROFILE

佐渡恵理
映像作家・アニメーター・アートディレクター。ロンドン芸術大学卒業。株式会社コトリフィルムを経て独立。かわいらしいなかに、ダークな要素を含めた世界観や遊び心と手作り感のあるアナログな演出を得意とする。TV CM, WEB CM, MV, Installation, Interaction and moving imageなど幅広く活動中。
HP
http://erisawatari.com/
Instagram
https://www.instagram.com/erisawatari_/

 

安部真理子
ARTIDA OUD ディレクター・デザイナー。ラグジュアリーブランドのMD・バイヤーを経験後、株式会社サザビーリーグに入社。ブランドのEC事業部マネージャーを経て、2018年4月にジュエリーブランド「ARTIDA OUD」をローンチさせる。インド・ジャイプールや伊勢志摩に赴きものづくりをするほか、MD、クリエイティブのディレクションをおこなっている。

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2月27日(水)からスタートするLIMITED STOREでは、下記3日間来店し、お客様一人一人に合わせたスタイリングをご提案するとともに、ブランドの世界観や商品に込めた想いをお伝えします。

―  Designer Apperance ―
3月1日(金)~3月3日(日)各日 pm1:00 〜 pm6:00
上記期間には、ARTIDA OUDデザイナーの安部真理子が来店。お客様一人一人に合わせたスタイリングをご提案するとともに、ブランドの世界観や商品に込めた想いをお伝えします。


― ARTIDA OUD CARAVAN ―
2月27日(水) 〜 3月5日(火) 
阪急百貨店うめだ本店 1階アクセサリー プロモーションスペース11

⇒ 詳しくはこちらから

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PHOTOGRAPHER/SACHIKO SAITO

EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN

TEXT/HANAKO FUJITA


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