Journal

Prayer of the Pearl

interview

Prayer of the Pearl

真珠たちの祈り ー真珠養殖の佐藤珠樹さん、ヤシマ真珠の山本行太さんを訪ねて



伊勢志摩の豊かな海を育むリアス海岸の英虞湾に浮かぶ島々のひとつ、間崎島に1949年設立された弥志磨真珠養殖場は、71年に伊勢市にて小売部門をスタート。その五代目となるヤシマ真珠の山本行太さんと、島内で養殖業を続ける叔父の佐藤珠樹さん。ARTIDA OUDでは、以前より「philia」シリーズでのコラボレーションを行ってきました。

今回、本多沙映と制作した限定チャームにも全面的に協力をしてくれた山本さんと佐藤さん。本多とともに、ふたりをのもとを訪ねました。


左から佐藤珠樹さん、本多沙映、山本行太さん。


4年の月日を経て作られるアコヤ真珠

佐藤さんは、間崎島で40年以上アコヤ真珠の養殖に携わる超ベテラン。その確かな技術を持ってしても、真珠養殖は簡単なものではありません。海流や海水温、台風の発生など、予期せぬ自然現象が次々と起こる「海」で行われるアコヤ真珠の養殖。真円のアコヤ真珠が取れるのは全体のわずか20%ほどだと言います。

まずは、アコヤ稚貝を、2年かけて健康な母貝に育てます。その間にも、生育の満たない貝などの剪定を繰り返していきます。その後、母貝に「核入れ」の作業を行います。真珠の芯となる貝殻を丸く削ったものと、外套膜と呼ばれる真珠の元となる貝の肉片の一部を切り取ったものを一緒にアコヤ貝の体内に入れます。そこから約一ヶ月、アコヤ貝は潮の穏やかな海の中で過ごします。これを「養生」と呼ぶそうです。


アコヤ貝から真珠を取り出したばかりの真珠。生命の力を感じさせる輝きを放つ。

「核入れは人間にとっての外科手術だと思っていただくのが良いかもしれません。たとえば、野球のボールをお腹の中に入れると想像してください。大手術ですので、外傷性のショックで死んでしまう場合もあり得ます。そのようなことが起きないよう、養殖カゴの密度を上げることで酸素濃度や潮の影響を抑え、徐々に生理状態を下げて行きます。それがいわゆる“麻酔をかける”という状態。ですので、このカゴ詰め作業が1番の肝になります。」


左に見える養殖棚の下に、佐藤さんが育てるアコヤ貝たちが眠る。

そこからさらに2年、豊かな英虞湾の海に抱かれ、いよいよ収穫のとき。今回の限定チャーム「behind sphere」に使用された6mmのアコヤ真珠がやっと完成します。ひとつずつ、丁寧に手作業で貝を開く中で、「真円の真珠が出てきた喜びはいつも格別」と佐藤さんは言います。

佐藤さんが養殖を行う間崎島は、「真珠養殖の島」と呼ばれ、最盛期の1950年代には700人近い住民の多くが養殖業を営むなど、活況を極めていました。しかし現在、島民は70名弱、養殖業は10軒程度となり、その多くが高齢者となっています。


真珠を通して、社会に何かを還元したい

「世界全体で人気が高まっている真珠は、価格が高騰しているのにもかかわらず、養殖業の成り手はとても少ないのが現状です。」
そう語るのは、佐藤さんの甥にあたる、ヤシマ真珠五代目、山本行太さんです。



東京の大学を卒業後、百貨店勤務やファッションジャーナリストのアシスタントを経て、家業であるヤシマ真珠の仕事を始めた山本さん。高校卒業までは、真珠にまったくと言っていいほど興味がなかったそう。

「ごく一般的な男子高校生だったので、真珠には興味、というより関心が向きませんでした。社会人になったあと、伝統工芸のプロジェクトに関わる機会があり、そこから真珠への興味が強く湧いてきました。この仕事を通して、社会に何かを還元できたら、今はそんなふうに考えています。」


真珠に穴を開けるのも「デザイン」のひとつ

山本さんは、叔父の佐藤さんから直接養殖について学び、さらに自身の手で加工からデザイン、販売も行っている。分業があたりまえの真珠業界では異例のこと。そこには、業界の慣習を変え、業界全体を持続的なものにしたい、との思いがあります。



「たとえば、真珠を数珠繋ぎにするための穴を開ける作業。分業で行う場合、機械的に真珠の真ん中に穴を開けてしまいますが、バロックパールのような不定形な真珠の場合は特に、どこに穴を開けるかで全体のデザインが変わってきます。」

穴あけの作業もデザインの一部だと語る山本さん。養殖から販売まで、古くから培った親族内のコミュニケーションを通すことで、真珠に新たな価値を生み出そうとしています。


ヤシマ真珠
https://yashima-pearl.com/about/

Photos : TOHRU YUASA
Text : KUMIKO SATO (3710Lab)

「Prayer of the Sea」スペシャルページはこちら
Iseshima Pearl Jewelry Collection "philia" はこちら

関連記事はこちら「Pearls -ありのままの姿で輝くアコヤ真珠のバロックパール-」

▼「Prayer of the Pearl」movie

BACK TO INDEX