ARTIDA OUD

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谷尻 直子 / NAOKO TANIJIRI

interview

谷尻 直子 / NAOKO TANIJIRI

渋谷区富ヶ谷に、金曜のみオープンする料理店がある。週1日だけという特別感あふれるその店は、料理家の谷尻直子が営む「ヒトテマ」。騒がしい大通り沿いなのに店内に入ると穏やかな気分になれるのは、幅広いカウンターにどんな料理が並ぶのか、期待が膨らむからだろう。夫である建築家・谷尻誠に背中を押され開店したのが3年前。当時彼女は0歳児のママだった――子育て、妻、そして料理家として多忙な日々を送りながら、カウンター越しにも伝わるほど所作や表情が美しい。歩んできた道を話す凛とした姿は、ARTIDA OUDのテーマ「raw beauty=ありのままの美しさ」を纏う。ほんのり甘いあじさいのお茶をいただきながら、ファッションや食への想いを聞いた。

 

ファッションから食の世界へ

 

―――以前はファッション・スタイリストをされていたそうですね。 

もともとは、1年間インテリアコーディネーターの学校に通ったんです。でもお洋服が好きだったもので、アパレルの販売をして。そのあとお金を貯めて、英語を勉強するためロンドンに留学しました。そこで隣のクラスにいたスタイリストの三田真一くんに、お手伝いを頼まれたのが始まりですね。日本に戻りアシスタントを経て、24歳でスタイリストとして独立しました。永瀬正敏さんや麻生久美子さん、小橋賢児くんとお仕事させていただきながら、Alexander Lee Changというブランドの立ち上げに携わりました。

―――ファッション業界から料理家になられたきっかけはなんだったのでしょう?

ファッションは、おばあちゃんになっても興味があると思うんです。でも30歳くらいになったら、新しいコレクションを追うよりも、自分の好きなものをもっと大切にしたいって考え始めて。私は8人大家族のなかで生活してきて、小さいころから料理がすごく好きだったんですよね。幼少から興味を失っていないものは、70、80歳になっても楽しんでいられるだろうなと思いました。あとは食のアーティスト・諏訪綾子さんとお仕事をご一緒したことも大きかったです。彼女の記事を読んで魅了され、私からアプローチしたんです。2年弱、PRの肩書で企画進行のお仕事をご一緒して、それをきっかけに食に軸足を置くようになりました。


―――谷尻さんのお店「ヒトテマ」は、どういったコンセプトなのでしょうか?

お店のテーマは“現代版のおふくろ料理”です。もちろん苦手な食べ物などは伺いますが、お客さまがオーダーを決めるというよりも、おかんが「これ食べなさい!」と、季節の美味しいものを出すイメージです。大人の好き嫌いを克服できるように、作り方や使い方を工夫していますね。そしてお客さまに「うっかり野菜たくさん食べちゃった!」と思っていただけることを目指しています。



―――メニューを考える際は、何にインスピレーションを受けるのでしょう?

1つの食材から組み立てますね。お洋服と似ているかもしれなくて、このワンピースに何を組み合わせようかしらというのに近いかな。調味料もできるだけ自分で作るようにしています。食材自体に、甘さやほろ苦さやこりこり食感やプチプチ感などが個々にあるので食材のチカラを信じるように組み立てます。

 

“脳欲”と“胃腸欲”で食欲を整える

 

―――美容のために「食」で気をつけている習慣はありますか?

たくさんあるんですけど、家でも外でもベジタブルファースト、野菜をまず始めに食べるよう心がけています。あとはできるだけ本物の調味料を使うこと。余分な塩分と糖分を摂取することなく、満足できます。お砂糖も発酵させて、発酵シロップを使うようにしていますし、具だくさん味噌汁もよく登場しますね。

―――「食べる」行為は心身を豊かにするものですが、ムリなダイエットをするなど「食」を楽しめていない女性もいます。

“脳欲”と“胃腸欲”という考え方を知っていると良いのかなと思います。脳が欲しているものと、胃腸が欲しているものって実は違うんですよね。お菓子を食べすぎちゃったりするのは、ストレスが原因になっていることが多くて“脳欲”です。胃腸は体を気遣って、栄養素を欲します。「チョコレートを食べたい!」と思ったときに、「これは脳欲?胃腸欲?」と立ち止まって、食欲を整えていくことが大切だと思います。



―――今後チャレンジしたいことを教えてください。

たくさんありますが、ベーシックなところでは、活動を続けていくこと自体がチャレンジだと痛感しています。お店も、息子の年齢もようやっと3歳で。最初は本当にきつかったですが、ここへきてなんとか両立できる様になってきた段階なので(笑)。

未来を見ると、ベジタリアン経験や子育て経験、海外経験を生かして保育室やスタイリッシュなファミレスも手がけてみたい。それと、現在関わらせてもらっている米粉普及の活動「米粉ファンクラブ」で行っている、他の料理家さんとの共作も、過去の「一人完結型」と違った新しい試みなので深めていきたいです。


 

子育てと夫婦、そして仕事は“女優業精神”で両立

―――お子様がいらっしゃいますが、家族ができ、「食事」に対する考えは変わりましたか?

究極なことを言いますと、運動と食事の二つしか、健康を支えられるものはないと思うんです。子どものご飯を作るのはなかなか大変なのですが、子どもも自分も満足するものを作ることは、日々挑戦で楽しみでもありますね。たとえば子どもはお砂糖が好きなんですけど、私は心からはあんまり食べさせたくなくて、どうしたらいいかなとか。それが結果的にお店でのお料理にも繋がっているんですよね。

―――子育てと夫婦、仕事の両立。どうやってうまくバランスを取っていますか?

役者の卵というか、女優業を頑張るつもりで生活していますね(笑)。息子のまえでは、かあちゃん役をハイパフォーマンスでできるように。仕事終わり、主人も早く終われば一緒にワインを一杯だけ飲んで帰るのですけど、その日はデートで、恋人や妻役。デートのときはいつもより、おしゃれを楽しみますね。最近は主人の前で、妹役や恋人役が下手になってきているので、「もっと可愛げを!」って私の中の監督から叱られています。(笑)



―――無邪気になる瞬間はどんなときでしょう?

旅先でプールに入る時間が好きですね。わざと目を閉じて泳いでいます。潜ったとき、水のなかにいろんなものが離れていく感じが良いですね。あとは週に1度のヨガです。毎週日曜の朝は旦那さんに子どもをお願いして、15年続けています。よく行く美味しいお店ですか?…うーん、内緒です(笑)。

―――仕事に対してプロフェッショナルで輝き続けるために意識していることはありますか?

できる限り、できる範囲で学び続けることでしょうか。これは建築を20年やっている主人からインスパイアされたんですけど、知らないことを「えー、全然知らんかった!」って言うんですよ。いつも、そう素直に言える感性を重視したいと思っています。最近は、去年だとフランス菓子の集中コースを受講したり、発酵食スペシャリストを取ったりしました。それが日々のお料理に生きてくると良いなと思って。主人も私を信頼して、協力してくれるのがありがたいですね。

 

迷うときは、大切なひとを喜ばせられるか考える 

 

―――このブランドは”raw beauty=華美に飾らず、ありのままの女性の美しさ”をテーマにしています。そういった意味で、美しいと思う女性はいますか?

友人に、コミュニケーション・ディレクターの高橋直子さんという方がいます。繊細で鋭い感覚を持ちながら、とっても柔らかくて優しくて、いつも誰かを喜ばせることを考えているんです。私と同じく「直子」と書くのですが、彼女は「なほこ」と読む。真っ直ぐという文字ですが、ホッとひとを包むような方ですね。学ばせてもらうことが多いです。あと長澤まさみさんも好きです。外から見ていても伝わるそぎ落とされた集中力がカッコイイなと思っています。

―――内面の成熟も人の魅力を引き出す大きな要素ですが、谷尻さんのお気に入りの映画や、大切にされている言葉を教えてください。

映画が大好きなので選ぶのに悩んでしまったんですけど、『ナイト・オン・ザ・プラネット』と『マイ・ブルーベリー・ナイツ』がお気に入りですね。『ナイト・オン・ザ・プラネット』は、主人公がハリウッド女優になる誘いをバサッと断る軸が格好いいなと思って。あと目が見えない女性や黒人のタクシードライバーが出てきたり、社会派な要素もあるのにスタイリッシュ。好きな作品です。言葉は、Pinterestで自分を勇気づけてくれる言葉をピンしていて。たとえば「覚悟がなくてもいい。不安なまま歩き始めてもいい。歩いているうちにこれまでの道が誇らしく思えて腹が決まってくる。どんな事が起きても歩みをやめないこと。自分を信じること」などです。



―――ARTIDA OUDで気に入ったアイテムを教えてください。

ピアスが大好きなので、種類が豊富なのが魅力ですね。形がいびつなバロックパールが素敵。私の会社は「HAI ILO」という名前なんです。夜から朝になるときの空がグレーで、それにちなんでいて。なので夜明けの光をモチーフにした「dawn」シリーズは、とても格好いいと思いました。リングの重ね付けもすっごくかわいい。ジュエリーはアイテム1つを買ってしまいがちでコーディネートってなかなかイメージしにくいんですけど、ARTIDA OUDのInstagramみたいにコーディネートの提案があるのは素敵だなと思います。ジュエリーアドバイザーのように見させていただきました。仕事柄、ネイルはせず短い爪なのでそれに映えるリングは嬉しいですね。
 

―――さまざまなフィールドで頑張る女性たちへ向けたメッセージをお願いします。

人生ではいろんなことが波のようにあると思います。私もロー状態だったときもあって、振り返ると“裏山の住民”だったなって。裏の山に行ってしまうと、ほかが羨ましくて仕方なくて、自分に目を向けられなくなりがちです。そんなときには、物事を小さい範囲で考えるようにしていけばいいんだと思います。みんなにどう見られるかは気にせずに、近くにいる大切な人を喜ばせられるか。迷ったときはそれだけを考えておしまいにします。視野を広げるよりも狭めたほうが、気持ちがクリアになるきもあるのではないでしょうか。


 





PROFILE
谷尻直子



料理家。渋谷区富ヶ谷で毎週金曜日のみオープンするレストラン「ヒトテマ」を運営。「現代版おふくろ料理」をコンセプトとして、家族のためを想って作る食事と同じようにお客様への食事を考えて提供することにこだわる。
金継ぎなどの食を取り巻く文化を広めるプロジェクトも行う。
日々の学びや経験を更新中。
https://www.instagram.com/naokotanijiri_hasegawa/?hl=ja

 
「ヒトテマ」の予約はFBのメッセージより。
https://m.facebook.com/hitotemashibuya/



PHOTOGRAPHER/HANA YOSHINO

MOVIE/KOICHI KONDO

EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN
 TEXT/HANAKO FUJITA

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