アーティスト・雑誌編集者 / オードリー・フォンドゥカヴ
東京から離れた感覚になる、澄んだ空気。ゆったりと時間が流れる。フランス人のアーティストであり編集者のオードリー・フォンドゥカヴの自宅だ。大きな窓には南天や紅葉の木が映り、壁には珊瑚や石など自然の顔料を使って描かれた絵が掛けてある。
制作のときは、目をつむる。
「私の絵もARTIDA OUDのテーマ“raw beauty=ありのままの美しさ”と一緒よ」と少女のように語る笑顔がチャーミングだ。心の声に耳を傾け、その声を尊重することーそれはもしかしたら、“raw beauty=ありのままの美しさ”を纏う秘訣なのかもしれない。アートや制作、日本の文化、自分らしくいることについて話を聞いた。
フランスを離れ17年。日本はのびのびとしていられる場所
―――フランスを離れ、日本へ来られたきっかけは?
もともと、“Dumb Type”という京都のダンスグループが好きで、フランスでパフォーマンスをやっていたのを観て日本に興味を持ちました。そしてボザール・ドゥ・マルセイユ(フランスの国立美術学校)で日本の現代美術や歴史を勉強して、文部省からスカラーシップをいただけることになったので大阪大学に来たのが最初ですね。大学では現代美術や古い仏像の勉強をしました。たくさんのアーティストに会うことができて、国が違ってもアートはアートで、さまざまなカタチがあっていいんだと強く想いましたね。
―――もう17年も日本にいらっしゃるんですね。
はい。大学を出たら帰る予定でしたが、もうちょっと日本にいたいと思って、飛行機に乗らなかったんです。フランスも好きなのですが、日本の文化も大好き。私が育ったフランスのマルセ―イユはアグレッシブな人が多いのですが、日本はピースフル。のびのびできます。そしてみんな、美意識も高い。自然、ファッション、アート…フランス人と日本人はそのセンスが似ていると思います。
―――いまはどのような活動をされているのでしょうか?
大きく3つですね。自分の作品作り、子どもに現代美術を教えること、『TOO MUCH Magazine』の編集です。子どものアートプログラムを始めたきっかけは、ボンポワンというフランスの子供服ブランドの方にアカデミーをやりたいと話したことです。内容は自分で考えますが、特に何かを教えることはしていません。一緒にアートを楽しむ時間ですね。主人が編集長をしている『TOO MUCH Magazine』には、編集者として関わっています。主人とはパーティーで知り合ったのですが、自分が日本で結婚することになるとは思っていませんでした(笑)。
雑誌のテーマは「スペースと人の関係」を建築やアートを通して考えています。ワンテーママガジンなので毎回特集は違うのですが、テキストも多く読み応えがあると思います。毎号、面白いアーティストといっしょにプロジェクトができて刺激的です。6月15日に“シェルター”をテーマにした号が出るのですが、それはTOKYO CULTUART by BEAMSでコラボ展覧会を行う予定です。

自然由来の顔料を使い、絵を描くときは目をつぶって
―――オードリーさんのアーティスト活動について教えてください。
絵とインスタレーションが主です。絵を描くときは、手に顔料をつけて描くことが多いですね。石や貝など自然由来のものを使って、手や腕、肘まで絵の具をつて描きます。もともとダンスが好きだったこともありますし、自分の体の息遣いなどを伝えたいんだと思います。
―――絵は、何にインスピレーションを受けていますか?
その時々で変わりますね。水彩は長くやっていましたが、油絵は私に合わなくて。いま使っている自然の顔料は、すごく私に合っています。この絵(下の絵)の茶色は、抹茶なんですよ。ほかには、アフリカの砂に、珊瑚、貝、石…自然って面白いんです。
―――自然のものがお好きなんですね。
はい、そう考えると、私の作品もARTIDA OUDのテーマ“raw beauty=ありのままの美しさ”と同じです。宝石も、そのままの石が好き。自然のままは、面白いし美しいと思います。私は、自分の作品には、移り変わっていってほしいんです。抹茶を使った絵の線は、最初は緑色だったんですが、自然なものだから時間が経つと茶色になる。そういう変化を楽しみたいです。この青いリングは、石の感じが素敵ですね。
―――アクアマリンです。透き通った海をイメージしているんですよ。
石は人間よりも長い歴史を持っているので、見ているだけで自然や地球のミステリーを感じられますね。このカットを見た時、私は最初に琥珀糖を思い浮かべました。
―――インスタレーションについても聞かせてください。
空間を作るのも好きで、メゾンブランドでのディスプレイを担当したことがあります。空間だとお花や貝殻なども使えて、表現の幅が広いので楽しいですね。ARTIDA OUDのローンチパーティの空間も、とても素敵でしたね。
―――ご自身もリラックスして自然体でいるために、していることはありますか?
座禅が大好きです。お寺には週に1回行っていて、家では毎日お香を焚いて座禅していますね。私、作曲家のジョン・ケージが好きで禅に興味を持ち始めました。お寺でたくさんの人と座禅をすると“サイレント・オーケストラ”のような感じがして気持ちが落ち着くんです。一人でやるときは、考えごとがたくさん湧いてきてしまって難しいんですけどね(笑)。
―――何をしている時間が楽しいですか?
ううーん、私、いつもあんまり変わらないんです。アカデミーで子どもと一緒にいるから結構子どもっぽいかもしれませんし、趣味という言葉もあまり好きじゃなくて。何でも、同じやり方で取り組みたいですね。
ひとつ挙げるなら、お料理は好き。精進料理を作ります。日本に来てすぐお寺に食べに行ったら、すごく体に合っていて。お教室にも通って、本も読んで勉強していますね。手軽に、インスタントにできるものよりも、ゆっくりじっくりするのが好きです。お料理はゆっくり出汁を取りますし、コーヒーも豆から挽きます。
絵は目をつむって描いています、次はここに手を加えようとか決めたくないんです。だからちょっとメディテーションの感覚と近いかもしれません。自分のカラダの声を聞いているから、日によって色も変わります。蛍光っぽい日もあれば、落ち着いた色味の日もある。作品は、自分をからっぽにして作っていますね。
女性はみんな、美しさを兼ね備えている
―――このブランドは”raw beauty=華美に飾らず、ありのままの女性の美しさ”をテーマにしています。そういった意味で、美しいと思う女性はいますか?
女性はみんな、美しさを兼ね備えていると思います。誰か名前を挙げるのならば、画家のジョージア・オキーフ、あとは文章を書く人も好きです。美しい言葉を使う人は素敵だと思いますね。

―――内面の成熟も人の魅力を引き出す大きな要素ですが、オードリーさんの心に残っている作品は何かありますか?
『荒馬と女(The Misfits)』というマリリン・モンローの映画があるんです。彼女は世間的にはセクシーというイメージですが、彼女の弱った姿が出てくる映画で…すごく美しいんです。強いだけではなくて脆さもある、自然な人間の姿を描いているところが、好きですね。
―――ARTIDA OUDで好きなアイテムを教えてください。
ゴールドと、パール、石っぽいものが好きです。このネックレスとリングはかわいいですね。私はメゾンブランドのジュエリーはあまり身に着けないのですが、ARTIDA OUDのアイテムは気に入っています。本物の石やゴールドを使っていて、ストーリーがあるから。フランス人は好きなものを長く使っているといわれますが、本当にそう。好きなものに囲まれているのは、豊かなことだと思います。
―――うれしいです。今日つけていただいているネックレスは“sand”というシリーズで、コインがモチーフなんですよ。
このネックレスと、この表面のボコボコは、インドの職人さんが手作業でつけたんですか?ぬくもりが感じられて、素敵です。

あと、パールは昔から好きですね。ARTIDA OUDのサイト内「Our Journey of Creation」にて、ブランドのアコヤパールに関するクリエーション動画がアップされているのですが、そのフランス語でのナレーションも担当させていただきました。ナレーションのお仕事はそんなに多くないのですが、ARTIDA OUDの世界観に共感し、やらせていただきました。ジュエリーは、「あ、好き」と直感で好きと思ったものを身につけます。コーディネートを考えたりは、あまりしません。
―――さまざまなフィールドで頑張る女性たちへ向けたメッセージをお願いします。
12歳の娘がいるのですが、いつも「あなたは何でもできるのよ」と伝えています。彼女は4歳からヴァイオリンをやっていて、指揮者を目指しているんです。毎日何時間も練習して、それを応援することも、私のチャレンジ。最初は日本ではどこでヴァイオリンが習えるのかも知らなくて。でもこうして女性だからできない、男性だからできる、外国人だからできないということは何もないと彼女に伝えてます。
PROFILE
オードリー・フォンドゥカヴ
1974年、フランス生まれ。マルセーイユでアートを学んだ後、01年より日本へ。ドローイングや写真とのミックスなどその表現方法は多岐にわたる。『TOO MUCH MAGAZINE』の編集者、子どもたちにアートの楽しさを伝える講師、アーティストといった多彩な顔を持つ。
https://www.instagram.com/audrey.fondecave/
『TOO MUCH MAGAZINE』
https://www.toomuchmagazine.com/
PHOTOGRAPHER/Motohiko Hasui(W)
MOVIE/Kondo Koichi(TO NINE)
EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN
TEXT/HANAKO FUJITA
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