シルヴィア・コンデ / フォトグラファー
遥か彼方をゆく悠久の旅、そのなかで出逢う大自然の偶然、文明の神秘――
ARTIDA OUDが2018年4月にブランドをローンチするまえ、ブランドディレクター・デザイナーである安部真理子は、頭の中で描いてきたビジョンを表現するクリエイターと出逢った。
シルヴィア・コンデ。日本から離れた、スペイン・バルセロナ、そしてドイツのベルリンに拠点を置くフォトグラファーだ。彼女がファインダーを通して写す世界は、美しく幻想的で、少し、儚さをはらむ。雄大な自然をまえにすると人は心地いい孤独を感じる、その感覚を思い出す。
自然がインスピレーションの源だという彼女。「私たちはありのままで、すでに美しい生き物。そのことを祝福したい」と口にし、ARTIDA OUDが生まれるまえから、ブランドが掲げる“raw beauty=華美に飾らない、ありのままの女性の美しさ”を追求してきたことがわかる。
母になり、その想いはより強くなる。メールでお話を伺った。
写真と出逢い、スペイン・バルセロナからドイツ・ベルリンへ
―――ARTIDA OUDがブランドを立ち上げたときから、素敵なお写真でブランドの世界観を表現してくださっているフォトグラファーのシルヴィアさん。ARTIDA OUDとの出逢いについて、お聞かせください。
ちょうどARTIDA OUDがブランドを立ち上げたばかりのときに、声をかけていただきました。私の写真でブランドのビジョンを表現したいとお話をいただいて、とても光栄でした。実際にジュエリーを拝見したらどれも芸術的で、申し分なく優美で繊細。思わず魅了されてしまいました。

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―――シルヴィアさんは、どのようにしてフォトグラファーになられたのでしょう?
何年かまえに母が使っていたオリンパスのトリップというカメラを受け継いで、友人や家族、風景の写真を撮り始めました。それが楽しくて。そして大学で被写体をモノクロで表現する写真の研究をしているときに「これこそ、私が生涯を通してやっていきたいことだ」と気づいたんです。
大学卒業後はバルセロナからベルリンに移り住み、ベルリンの写真専門学校「オストクロイツ・シューレ」に通いました。デザインや照明、現像、写真の歴史について学んだのですが、学校では、私が追求したいと思っていたことすべては学べなかった。なので、そのあとは独学で写真と向き合ってきました。


―――専門学校に通っていたドイツのベルリン、そしてスペインのバルセロナ、2つの拠点を持たれているんですね。
バルセロナは私が生まれた地であり、育った場所でもあります。最初の大学課程を終えたあとベルリンに引っ越しましたが、この決断は私の人生を大きく変えるものになったんです。なぜならベルリンで、私自身、自分とは何かを見つけ、パートナーと出逢い、子どもを授かることができたから。この街には心から感謝しています。
孤独でいる楽しみを知った、日本でのひとり旅
―――日本も好きで、お越しになられたことがあるそうですね?
3年前、ひとりで1ヶ月間バックパッカーとして日本に行きました。まさに夢のような旅でしたよ!東京から新幹線に乗って一路鹿児島を目指しました。屋久島に行き、そこから福岡、広島の界隈を散策して。そして京都に数泊したあと鳥取に向かい、日本のアルプス山脈にも足を運びましたね。アクティブですごいでしょう(笑)?毎日が本当に刺激的で、得るものがとても多い旅となりました。日本で出逢った人々、文化、食はとてもユニークで、触れたものすべてに恋をしたと言っても過言ではありません。
―――日本人よりも日本国内を訪れているかもしれませんね!日本の好きな場所を教えてください。
お気に入りの場所を聞かれたら、何の迷いもなく鳥取と答えますね。鳥取を拠点に活躍されていた写真家・植田正治氏の作品は以前から知っていたので、彼の写真美術館に行き、また、彼の作品に大きな影響を与えた砂丘にも行ってきました。とても感動しました。
それに、知らない人々に囲まれる日々は、いままでにない孤独を私に感じさせてくれました。その孤独感をなんとか作品に取り入れようと試行錯誤を繰り返して…日本でのひとりの時間は孤独でいる楽しみがある一方で、いままでの人生で常に私がもがき続けてきた“何か”があった。生まれてから初めて「ひとりでも幸せを感じられるんだ」と思えたことに、改めて気づきました。


―――シルヴィアさんが撮影される自然や女性の写真を見ると、美しさに息を呑みます。どんな想いで撮影されているのでしょうか?
まず、自然は、私の主なインスピレーションになっています。私は“本当の美”に興味があって、写真を合成したり華美に装飾したりするのは好きではないんです。それは人間の女性も同じこと。母なる地球は、もっとも雄大なものを創造してくれると信じているので、ありのままを写真に残すだけ。すでにこの世に存在し、我々のまわりにあるものに、それ以上を望む必要はありません。ちなみにこの写真は、スペインで撮影しました。



私たちはありのままで、すでに美しい生き物
―――先日ご出産され、母になったシルヴィアさん。撮る写真に、何か変化はありましたか?
はい、大きな変化がありましたね。これから追求したいテーマとして、“母性”により興味を持つようになりました。いま、母性をシリーズ化して、妊婦の方、お子さんや母親の写真を撮っています。母はどんな姿もタブーなしに美しく、オープンでいるべき存在。母になるということは、人生を変える経験で、生き抜くことが何よりも大切です。子どもが生まれたときに、母も生まれるのですから。

―――シルヴィアさんは「An Ode to Mother」という、母親に向けた母性についてのプラットフォームを運営されています。こちらのコンセプトを教えてください。
このプロジェクトは、母になる経験を交換できる場所があればという、私の個人的な想いから生まれました。前述したよう母になるということは人生を大きく変える経験であるにもかかわらず、社会はそれを当然にあるものだと思い込んでいます。いま、世の中では肉体的にも精神的にもさまざまなレベルで多くのことが起こっています。何も決めつけることなく、考えや感情を共有し、理解することは、人々がのびのび生きるための助けになるはず。何も正解や不正解などはなく、ただアプローチの方法が違うだけなんです。「An Ode to Mother」は、すべてを肯定する場所でありたいと思っています。
―――シルヴィアさんが撮られる、女性のカラダの美しさにハッとします。肌の色、体型、年齢の違いはあれど、どれも個性的で美しい。ARTIDA OUDも、石や女性のありのまま個性を美しいと思い、大切にしています。
“ありのままの美しさ”を大切にする点では、私とARTIDA OUDは、想いが似ているのだと思います。彼女たちを撮影する時間は、純粋な幸せです。オンラインで公開されているのは、ほんの一部。アイデアはたくさんありますが、まだまだ時間が足りないんです。
そんな私を見てパートナーは、“いいアイデアには時間がかかる”と常々言ってくれます。私たちは、昔はとても目まぐるしい時間軸のなかで、ガムシャラに働いて生き急いでいました。母になり母性を持ったことで、罪悪感を持つことなくゆっくり生きていい、すべてのことを穏やかに受け止めていいんだと気づきました。

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―――自分にコンプレックスがあったり、年齢を重ねていくことに恐れをなしたりする女性もいます。自分とポジティブに向き合うヒントや、メッセージをいただけますか?
悲しいことですが、私たちが生きている世の中は“raw beauty(ありのままの美しさ)”を忘れがちです。私たちはありのままで、すでに美しい生き物なはず。そのことを祝福すべきなのです。誰しもコンプレックスや年老いていくのは怖いことかもしれませんが、それが人生というもの。恐れることなくそれらの不安を包み込んで、ともに生きていきたいですね。
―――今後表現したいこと、これから実現したいことはありますか?
いまの段階では、とにかくいまを生きることに専念するしかありません。母になり、“いま”に集中できるようになった気がします。また現代の私たちが生きている非日常の環境では、将来について予定を立てるのも非常に困難。いまを生きることに集中させてくれたのは、COVID-19がもたらした数少ないポジティブな結果かもしれませんね。
―――このブランドは“raw beauty=華美に飾らない、ありのままの女性の美しさ”をテーマにしています。その意味で、シルヴィアさんが美しいと思う女性はいますか?
ベルリンで、ユカタナカさんというヌードモデルに逢いました。彼女の自由な魂とありのままの姿が大好きですね。彼女と過ごす時間は、毎回インスピレーションを与えてくれます。

Organic vs Plastic Degradation, Study II
また、Claire O’Keefeさんも美しいと思う女性のひとりです。彼女はマヨルカ島に住んでいて、生まれつき大自然のオーラが分かる不思議なパワーがある方なんです。そして最後にご紹介したいのはCarla Cascalesさん。彼女はまじりっ気のない真実の美しさを、作品に取り込んでいるアーティストです。ぜひ作品をご覧ください。
―――“ありのままの女性の美しさ”には、内面の美しさもあると思います。自分を育ててくれた言葉や、本、映画などありましたら教えてください。
唯一思い浮かぶのは本ですね。3冊あります。1冊目は、Tara Brach 氏の著書“Radical Acceptance”。2冊目は“The Moonlists” という題名のLeigh Patterson氏の日記。最後は、“Be Here Now” とい題名の Ram Dass氏の本です。
―――今回、ARTIDA OUDの中からジュエリーをセレクトし、お写真を撮っていただきました。
Virgo(乙女座)のチャームは、私の息子と、母を彷彿とさせました。私は息子の母であり、母は私の母という繋がりがある。それは私が作品の中で表現したい輝きと太陽そのものであり、私に生きる力を与えてくれるものです。
こんなふうに、物語のあるジュエリーが好きなんです。かつて私がドイツに旅立ったとき、母から鳥の形をしたネックレスをもらいました。このネックレスは、私に訪れる新たなチャプターを応援してくれると予感したように。


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PROFILE
シルヴィア・コンデ
スペイン・バルセロナ出身。大学で写真を学んだのち、ベルリンの写真専門学校「オストクロイツ・シューレ」に。自然をインスピレーションの源とし、幻想的で美しい風景写真を撮影。一児の母になり、女性のありのままの姿を撮影するライフワークも。
Instagram
https://www.instagram.com/silvia_conde/
PHOTOGRAPHER/silvia conde
EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN
TEXT/MAHO MORITA & HIROKI TAJIRI FROM 81journal , HANAKO FUJITA
