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グラフィックデザイナー・アートディレクター / イトウ ナツミ

interview

グラフィックデザイナー・アートディレクター / イトウ ナツミ

「お声がけいただき嬉しいです。取材は、一時帰国のタイミングでお願いします」。明け方、海外にいるイトウナツミからメールが届く。国内外で活躍する彼女は、新進気鋭のグラフィックデザイナー・アートディレクター。デザイン、イラストはもちろん、写真に油絵、陶芸まで、常に新しい風を求める姿がまぶしい。「好きなものは何でも収集してしまう」と、石ころを手に包みほがらかに笑う表情は、まわりの心をゆるませる。一方、今回の写真はすべて彼女が被写体。シャッターが切られるたびに、いま自分に求められている表情を追求するクリエイターとしての信念を感じた。

女性らしいやわらかさも、クリエイターとしての静かな迫力も、どちらの顔もARTIDA OUDのテーマ「raw beauty=ありのままの美しさ」そのもの。「これが好き」という言葉がたくさんちりばめられたインタビューに、そのままのイトウナツミを感じてもらえるだろう。


心の声を素直にキャッチし、フリーランスに

―――フリーランスのグラフィックデザイナー・アートディレクターになられてどのくらい経ちますか?

もう6年です。もともとは音楽専門の高校で歌の勉強をしていたのですが、自分にできることを探したらデザインやイラストが浮かび、デザインの専門学校に通い始めたのが原点ですね。卒業して雑誌の編集部で働いているうちに、やりたいことが改めてわかってきて――私はスケール感に関わらず、自分が大切にしたくなるようなものをデザインしたいんだと気付きました。

 
―――その気付きを大切にし、会社を辞められたとか。不安はありませんでしたか? 

不安はなくて、むしろこれからのことが楽しみでしたね。繋がりがあったファッションブランドの名刺やDMなどをデザインするお仕事から、フリーランスとしてスタートしました。やっていくうちに、デザインだけではなくディレクションもできそうだと思い始めて。そうしたら、企業の方からお仕事をいただくようになり、いまに至ります。

―――現在は、どういったお仕事が多いのでしょうか?

いまは、アートディレクションと写真のお仕事が多いですね。あとは、ブランドのクリエイティブディレクション的な立ち位置で入ることもあります。

ART DIRECTION BY ITO NATSUMI


DESIGN BY ITO NATSUMI 


写真を本格的にやり始めたのは、ここ数年です。高校時代は携帯電話で撮影して、Instagramの前身のような写真付き日記ブログを更新していました。たしか、お父さんにカメラをもらって撮り始めたら、お仕事のお話をいただくようになって…新しい表現を身につけるのは楽しいです。

BOOK DESIGN BY ITO NATSUMI

PHOTO BY ITO NATSUMI

―――海外でもご活躍されていますが、最初はどんなきっかけだったのでしょうか?

突然、海外で広告のアートディレクションのお話をいただいたんです。英語を話せないけど大丈夫かな…と思いつつも、海外のお仕事やってみたくてチャレンジしました。言葉の壁があっても、意外と何とかなるんですよね。

このあいだは、ヨーロッパへ撮影に行きました。最近は、感覚的なヴィジュアルを撮影してほしいという依頼が多くて。たとえば、葉っぱの写真だけでもいいんです。その葉っぱの柔らかさで、ブランドの世界観を表現して欲しいというようなオーダーです。アートディレクションをしている感覚よりも、私がいいと思ってやっているものにオファーをいただけていることが嬉しいです。 


PHOTO BY ITO NATSUMI

PHOTO BY ITO NATSUMI

本音では、肩書きは“イトウナツミ”がいい

―――イトウさんが手がけられるものは、“イトウナツミ”という作家性が強い印象です。何か意識されていることはありますか?

たしかにそうだと思います。日本ではどうしてもお仕事をするうえで「肩書き」は必要になってくるので、名刺にもグラフィックデザイン・アートディレクションと書いていますが、本音では、肩書きは“イトウナツミ”がいいかなと思っていて。「何やってるの?」と聞かれたら「アーティスト活動みたいなことしているよ」と答えていますね。



―――作家としての自分と、ディレクターとしての自分のバランスを難しく感じることがありませんか? 

最初のころはバランスを考えていましたね。それこそ、大手企業の方に「イトウさんのように、自分でディレクションをして手を動かすスタイルは珍しい」と言われたことがあって。でもどこまで自分を出すかとかバランスを考えていたら自分の好きなことができなくなりそうなので、いまは自分の感性を信じてアイデアを提案するようにしています。クライアントワークでも、もちろん先方の意向も汲んだうえで、自分の作品を作る感覚で作業していることのほうが多いですね。



インスピレーションの源は、“自分にとって”大切なもの

―――いま、一緒にお仕事をしてみたいクリエイターはいますか?

ネットサーフィンで見つけた、ロサンゼルスにいるスコット・ウェストさんという方に夢中です。グラフィックとアートディレクション、写真もやってらっしゃって、ソフィーブハイというジュエリーブランドや、ザ・ロウというセレクトショップのアートディレクションをやられたりしているみたいです。「COS」でもオススメのクリエイターとして紹介されていました。
写真の質感やタイポグラフィの選び方などが、私とすごく似ていると思っていて…実は、もう「好きです」とコンタクトは取っているんです(笑)。「LAに行ったら会いたいです、日本に来たら連絡してね」って。

―――制作活動において、インスピレーションの源になるものはありますか?

日常、私の身のまわりにあるものがインスピレーションの源ですね。私、コレクション癖があるので何でも集めてしまうのですが、その一部をお持ちしました。
松ぼっくりや石、紙全般です。ほかには、切手、文具、食器、箱、アートブック、アメコミ…好きなものが多くて、本当に何でも集めちゃうんです。海外から戻ってくるとき、紙や石などでトランクの半分が埋まっちゃうこともあるくらいです(笑)。

石ころや葉っぱなど自然のものはブツ撮りでも使いますし、イラストのモチーフにもしています。洋服のタグやカメラのフィルムなど、人にとっては捨てるものだったとしても、私にとってはインスピレーションの源です。生活のなかで自分が焦点を当てているものだから。自分の目線で見ている世界を、大切にしているんだと思います。





―――今後チャレンジしたいことを教えてください。

これまでやったことはないけれど、「できそう!」と思う表現にどんどんチャレンジしてみたいです。最近は、油絵を始めたばかり。あとは、ろくろで陶器を作り、展示会にも出しました。陶芸を始めたキッカケは、知り合いの方に「一緒にやりたいです!」と声をかけて教えていただいて。グラフィックも写真もイラストもやって、こんどは陶芸というと器用そうに聞こえますが、自分のことは、不器用だと思います。器用な友人たちに、助けてもらっているんだと思います(笑)。
 

 

大切なのは、自分の感覚をアップデートしていくこと

―――お仕事をするうえでのモットーはありますか?

いつも楽しんでいることです。楽しむというと、好きなものや興味のあるものに囲まれるように思えてしまうかもしれませんが、幅を狭めているわけではないんです。レースカーのお仕事をさせていただいたこともありますし(笑)、「面白そう!」と思うことは、前向きに楽しく取り組んでいます。

―――無邪気になる瞬間はどんなときでしょう?

家族と、恋人といる瞬間ですね。家族と一緒に住んでいるので、みんなで毎日のように食卓を囲み、お喋りをして楽しいです。恋人は、歴史や地理が好きで真面目なタイプ。デートでは、私が気になっているお店に足を運んだり、彼の好きな博物館に行ったりします。ホルマリン漬けの博物館に行ったこともあります(笑)。あとはカラオケも無邪気になりますね。意外に思われることが多いですが、アニメソングを歌います(笑)。実は、アメコミやポップカルチャーも大好きなんです。



―――仕事に対してプロフェッショナルで輝き続けるために意識していることはありますか?

探究心を忘れないことです。自分がいまいる場所からの景色がある程度見えてしまうと、安心してしまいがち。でもそれでは、新しいクリエイティブを生み出すのは難しいと思います。たとえば、年下の子の作品を観て「なんでこんなにヘンなもの作っているんだろう?(笑)」と面白がってみたり、全然好きではない写真やデザインに出合ったときに「どうしてこれが支持されているんだろう?」と考えてみたりして、自分の感覚を日々アップデートしていきたいです。



母の存在があったから、いまの自分がいる

―――このブランドは”raw beauty=華美に飾らず、ありのままの女性の美しさ”をテーマにしています。そういった意味で、美しいと思う女性はいますか?

ジブリの作品に出てくる、宮﨑駿さんが描くような女性の方は好きですね。ナウシカが代表かもしれませんが、基本的に芯が強くて、良い意味でおおらかなところが素敵だと思います。
私のまわりに将来のことで悩んでいる友だちが多いんですけど、私は何かを始めるとき、たいていそんなに深くは考えないようにしています。「楽しそう、やってみようよ!」っていうスタンスです。そうやって気楽に飛び込む感覚も大切だと思っています。



―――内面の成熟も人の魅力を引き出す大きな要素ですが、イトウさんが自分を育ててくれたと思うものを教えてください。

人物だと、完全に母親ですね。日常のなかに母の存在があって、いまの私がいる感じがしています。母はクリエイティブな仕事をしているでもなく、何か大きなことを言うわけでもないのですが、考え方を信頼していて。作品を作る際に、何かに迷ったら相談しています。センスの部分でも、祖母と母と趣味が一緒で、同じインテリアショップが好きなんです。雑貨や小物も、「これ、かわいい!」という感覚が同じで、いまの自分がこの仕事をしているのは、かなり影響を受けたからだと思いますね。



―――ARTIDA OUDで気に入ったアイテムを教えてください。

シンプルだけど丸いポイントがかわいい"grain"シリーズはどれも素敵ですね。私、ピアスが耳の軟骨あたり、少し変わったところに開いているんですけど、このイヤーカフならばシンプルで重ね付けもしやすそうです。

―――"grain"は、砂漠をイメージしていて、太陽の光に照らされきらきら輝く砂の粒がモチーフなんですよ。

素敵です。ちょうど最近、モロッコや砂漠などの乾いた場所に魅力を感じていたところで、“grain”を手に取ったのも何か惹きつけられたものがあったのかなあと運命的なものを感じます。モチーフやコンセプトを知ると、さらに魅力的に映りますね。

ジュエリーを身につけるときのこだわりは、男性っぽくなりすぎないことです。大柄なものは強くなりすぎないように引き算をして、華奢なものは地味になりすぎないようキラッと光るように付けたいと思っています。アルティーダ ウードのアイテムは、繊細ななかにキラッと華やかな光があるのが魅力的ですね。



―――さまざまなフィールドで頑張る女性たちへ向けたメッセージをお願いします。

たまには“無の時間”を作ると、心もカラダも楽になれるのでオススメです。たとえば私は、海外にいるときはパソコンを使う時間を決めています。そうすると、気持ち的に何かに追われることもなくなって、ノビノビと制作活動ができるんです。決して、忙しく働くスタイルをいけないと思うわけではないんです。でも、無の時間を作ることで心もカラダも、バランスをうまく取りやすくなると思います。








PROFILE
イトウ ナツミ


グラフィックデザイナー、アートディレクター。広告や書籍、ペーパープロダクトのデザインを中心に手掛ける。東京を中心に、国内外で活動中。作品もファッションも、クールでエッジィな彼女の世界観が広がる。

http://natsumiito.jp/

Instagram

https://www.instagram.com/natsumiito.p/

 

PHOTOGRAPHER/YUYA SHIMAHARA

MOVIE/SHO MATSUKI

EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN
 TEXT/HANAKO FUJITA



(右手・中指)
"sirius"K10 モチーフ メレダイヤリング 24,840yen (with tax)

(右手・小指)
"grain"K10 グレープイヤカフをリングとして着用 11,880yen (with tax)


(左から)
"grain"K10 スタッドミニフープピアス 7,560yen (with tax)
"grain"K10 マルチスタッドミニフープピアス 10,800yen (with tax)
"grain"K10 スタッドスウィングリング 9,720yen (with tax)
"grain"K10 マルチスタッドミニフープピアス 10,800yen (with tax)


"sirius" K10 モチーフ メレダイヤ ネックレス 32,400yen (with tax)

"grain"K10 マルチスタッドミニフープピアス 10,800yen (with tax)
"lotus" ダイヤモンド イヤーカフ12,960yen (with tax)

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