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国木田彩良 / クリエイティブエージェンシー「Nami creatives」代表・モデル

interview

国木田彩良 / クリエイティブエージェンシー「Nami creatives」代表・モデル

ARTIDA OUDの物語は、2018年 4月に動き始めた。振り返ると、どの一瞬を切り取っても、眩いストーンが溢れてくるような濃密な歩み。ローンチのタイミングでインタビューをした国木田彩良と一緒に、時間の移り変わり、変わりゆくもの、変わらないものを今、見つめてみたいと思った。

 

この3年で、彼女は活躍の軸をモデル業からクリエイティブエージェンシー「Nami creatives」の代表・ディレクターにまで広げた。かねてより思い描いていた夢を叶え、視界がクリアに、のびのびとしている。ARTIDA OUDもジュエリーブランドとして叶えるべきことを模索し、“I am”ドネーションプロジェクトを立ち上げ、インド・ビハール州に6つの幼稚園を建てるに至った。

 

時間が経つにつれての変化は、それぞれの成長であり、ありのままの延長だった。変わる、変わらないもの。光の粒子が見えそうなほど静かで美しい部屋で、色とりどりのクリスマスコレクションのジュエリーを纏った彼女に話を聞いた。

 

私の現在、3年のあいだでの気付き

 

―――今年、モデルからクリエイティブ・ディレクターへと新たなキャリアに踏み出されましたが、どんな想いからでしょう?

 

「Nami creatives」は、アートを通じて、日本とヨーロッパをつなぐ架け橋になりたいという思いをかたちにしたもの。実はずっと、こういうプロジェクトを立ち上げることを夢見ていたんです。もちろんモデルの仕事は、クリエイティブな人たちやとても面白い人たちに出会って刺激を受けることもあり、クールだし大好きなのですが、モデル業はハードなので、なかなか他のことに挑戦できなかった。パンデミックが流行し始めてからはすべてが一時停止して、毎日家の中でできる運動や料理をしていました。そこで、自分自身をもう1度見つめ直した時に、自分の夢を実現するには良いタイミングだと思い、東京に住み始めたころからの知り合いと一緒にこのプロジェクトを始めました。深い視点で多岐にわたる話をして、良い対話の機会でしたね。

 

 

―――3年前、“ありのままでい続けることを大切にしている”とおっしゃっていましたが、その延長線上での転身だったのでしょうか?

 

そうですね。不安はありませんでしたが、とても大変でした。なぜなら、私たちがほかに成熟したクリエイティブエージェンシーがある中で表現していくのは、強いアイデンティティが必要だと思ったからです。すべてをまとめ上げ、アイデンティティを構築するのに、少なくとも1年半はかかりました。ゼロからのスタートでしたが、これを楽しめるのは世代的なものだと思うんです。例えば、私の両親の世代だと会社に所属して働く方が安心だと思うかもしれませんが、私たちの世代にとっては、自分が満足できない状況から抜け出せないことのほうが本当にリスクなのです。私は常に自由な人生を求めていたので、自分が自分のボスになることを決めました。モデルの仕事は、誰かの夢を作ること。今は自分の夢を作る時だと思っています。両方、大好きなことです。



―――パンデミック禍にご自身のビジネススタイルを変えましたが、メンタル面での気づきはありましたか?

 

これまで私はとても色々なことに興味があって、もっともっと、と夢を見て、時間を使っていました。でもこういう状況になり、私は自分が予想以上に満たされていないことに気づいたんですよね。愛する人たちからも、自分自身からも切り離されてしまった感覚――ある意味では、それまでがとても表面的だったんだと思います。でもパンデミック禍では、地位やお金よりも愛する友人との心の平和や幸せが、生きていくうえで大切だということに気づけたのです。私の周りには住む場所を変え、自然が豊かな場所に引っ越した人がたくさんいます。面白いことに、「仕事を変えたんだ」という話題が出たら、「おめでとう!」と返ってくる。15年前だったら、「大丈夫?平気なの?」と言われていたかもしれませんが、今の私たちは「良かったね!」と言えるんです。

 

価値観を変えるということ

 

―――価値観が大きく変わったんですね。

 

そうですね。これまでの社会の主流は、本当に「我慢すれば」という感じだったと思います。でも今は、我慢って“自分へのいじめ”と同じで、メンタリティが全然違うんですよね。それは簡単な気づきではありませんでしたよ、今の地位を得るために一生懸命働いてきたのに、って。どうしても正当化してしまいますよね。

 

―――そういう気づきを経た今の国木田さんは、笑顔が、より豊かになった印象です。メンタルヘルスを保つために、心がけていることはありますか?

 

モデルはできなくなるまで続けたいと思っていますが、自分が本当に満足できる、共感できるプロジェクトだけに取り組むつもりです。自分が共感できないことをするために、自分の時間を費やすのではなく、もっと自分を大切にして、今はクリエイティブな仕事に集中しています。

 

 

日本で思い知った、ジェンダー問題の根深さ

 

―――日本のジェンダー問題について、国木田さんご自身が経営者になってから感じたことはありますか?

 

日本でビジネスをするようになって一番苦労をしたのが、男性との付き合い方だと思います。私のパートナーは男性ですが、例えばお金の話になると、相手は彼のほうを見ているんですよね。それが現実。でも、この経験のおかげで私はタフになることが出来ました。ジェンダーギャップ指数のデータを見ると、日本はいつもイスラム圏の国々よりも遅れをとっています。表面的には非常に進歩していますが、本質的には非常に保守的で、女性を傷付けることさえあると思います。

 

―――日常を生きる中で、日本人の女性は心に波風が立つことも。国木田さんはどのように心の平穏を保っていますか?

 

いつも冷静なわけではありませんよ。レジリエンス(困難や脅威に直面したときうまく適応する能力)の練習をして自分でコントロールして対抗できることもあるし、流さないといけないこともあります。人の心や自分に対する人の認識など、コントロールできないものに注意を向けると、心を壊してしまいますから。また女性として理解しておきたいのは、男性はなかなか私の現実を理解できないということです。男性の現実では自分が正しく、私にとっては私が正しい。だから私たちにできる最善のことは、他人に期待しすぎないことです。その中で共存していくことが今、大切なんです。



思い悩んだアイデンティティが強みに。クリエイティブエージェンシー「Nami creatives」での表現

 

―――「Nami creatives」の活動で、国木田さんのこだわりを教えてください。

 

私はロンドンで生まれ、パリで育ったというバックグラウンドがあり、本当の意味でフランス人のアイデンティティとは何かを理解しています。それは私を苦しめたこともありましたが、今は強みになっている。往々にして、海外の人たちが日本をクリエイティブで表現しようとすると、何かが場違いであったり、時代にそぐわなかったりすることがあります。私にとっては、リアルな日本の生活の中に存在する習慣、日本に存在するセット、日本に存在するキャラクターを組み入れることが非常に重要。日本の良さとフランスの良さを伝え、その両方の魅力を表現することができるのが私たち「Nami creatives」の強みだと思います。

 

 

―――今日本で一番注目しているのは?

 

建築ですね。隈研吾は本当に素晴らしいと思います。今年、私にとって最も影響力のある人物の一人です。彼は近代性と日本の伝統的な考え方との間に橋を架けることに成功している。日本古来の素材、その土地の自然環境や文化との調和、季節ごとに差し込む光を考え、日本の伝統的な家を備えた空間を作り上げることで、非常に偶然的な、ある意味では非常にモダンな美を作り上げているのです。

 

 

日本人は、愛を努力で見ている

 

―――国木田さんから見て、日本とフランスの文化の違いを教えてください、

 

自由と楽しさ。そしてロマンスだと思います。ロマンスは自由の一部です。愛情とは苦しみのないものですが、壊れやすいので大切にしなくてはいけません。 日本人が愛してやまない「侘び寂び」の感覚だと思います。

 

―――恋愛における考え方も違うと思いますか?

日本人は愛を努力で見ていると思います。ある意味、男女の不平等もそこから来ているのではないでしょうか。例えば、男性は職場で働き、女性は母親であることを期待されている。それが日本の現状です。それが彼らの愛の示し方なのです。ドイツはヨーロッパの中の日本だと言われていて、出生率も非常に低いのですが、それはコミュニケーション不足でお互いに愛していると表現しないからだと思います。大切なのは、男性も、女性も、もっと想像することではないでしょうか。ジェンダー問題は、男性だけの問題ではありません。日本の女性もオープンであるべきだと思います。そして、相手に自分と同じことを期待するのではなく、もっとコミュニケーションが大切です。

 


歳を重ねた変化は、ジュエリーにも

 

―――今回、ARTIDA OUDのジュエリーではどんなものに惹かれましたか?

 

並んだジュエリーを見て、自分の変化を感じました。以前はリングをつけることは少なく、イヤリング派だったんです。そして、今では重厚な装飾のもの、カラフルでクリエイティブなリングを好むようになりました。歳を重ねた変化ですね。指輪をしていると、何か落ち着きます。うまく言えませんが、何かに触れたとき、それがここにあるということで、守られているような感覚。カラフルでギリシャっぽい指輪が好みです。エメラルドは2021年のカラーで、トレンドであると同時にどこか懐かしさもある。母親のような女性らしさもあって素敵ですね。

 



―――ARTIDA OUDも、ブランドローンチから3年のあいだに、かねてよりチャレンジしたいと思っていたドネーションの企画を実現し、インドに幼稚園を建てるに至りました。ARTIDA OUDの動きを、どんな想いでご覧になられていましたか?

 

インドの大きな資産のひとつは宝石です。そういったインドの資源に恩恵を受けてきたのだから、ドネーションは恩返しになるのではないでしょうか。また、インドはジェンダーギャップが非常に大きい国で、望まない相手と結婚したり、非常に危険な状況に置かれたりと、少女たちには多くの選択肢がありません。私たちが教育と、勇気を与えることで、少女たちがその後何をしたいのかを決めるべき扉を開くことができると思うのです。ARTIDA OUDはインドのストーンを取り扱っているブランドとして、ジュエリーを身に着ける一人一人が意識を持つきっかけになることは素晴らしいと思います。





――国木田さんのバイタリティの源と、今後について教えてください。

 

バイタリティのためには、本を読むことが本当に大切だと思います。そして実際に見たり、感じたりするために旅に出る必要があると思います。インドやネパールに行ってみてください。文化について読むことと、それを感じることはとても違う。「Nami creatives」を始めた当初の私の目的は、文化の橋渡しをすることでした。このプロジェクトが始まった頃は、アート市場も活気に満ちていて、東京やベルリンなどのギャラリーに世界中から人が集まってきていました。今は、すべてが一時停止状態で、ギャラリーは閉鎖されていて、物理的に見ることができなくなりました。そういう状況になったことで、改めて文化や芸術に救われた。ここから先の未来には、また新しいものが生まれてくるんです。

 

 

人が生み出す文化・芸術は
人々の生、未来に
確かな光をもたらす。
 
国木田彩良さんの
新しいクリエイティブのかたちを
私たちはどこかでお披露目したいと考えています。

 


PROFILE

SAILA KUNIKIDA

1994年ロンドン生まれ、パリ育ち、イタリア人の父と日本人の母を持つ。明治時代に小説家・ジャーナリストとして活躍した国木田独歩の玄孫でもある。2014年拠点を日本に移し、翌年モデルデビュー。起業家としての顔も持ち、2021年1月にクリエイティブエージェンシー「Nami creatives」を立ち上げ、日本とヨーロッパの架け橋を目指す。

Instagram

https://www.instagram.com/saiknd/

 

PHOTOGRAPHER/YUICHIRO NODA

HAIR/HANJEE (SIGNO)

MAKE-UP/MARIKO TAGAYASHI (SIGNO)

STYLIST/KOSEI MATSUDA (SIGNO)

EDIT/MARIKO ARAKI, HANAKO FUJITA(RIDE MEDIA&DESIGN)

TEXT/MAHO MORITA & HIROKI TAJIRI(81journal), HANAKO FUJITA(RIDE MEDIA&DESIGN)


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