アブドゥル・ジャバー / 国際NGOプラン・インターナショナル(インド)
「インドの方々の、明るい笑顔が大好き」。
ARTIDA OUDのブランドディレクター・デザイナーの安部真理子は、ブランドローンチよりもはるか前から、自分の立場で、彼らの笑顔を守るためにできることはないかと胸に想いを抱き続けてきた。そして2019年夏。
ひとりひとりが「私が私であるために(= I am)」と発信することで、自分らしく活躍できる環境が広がっていきますように――そんな祈りを込めて、“I am”ドネーションをスタート。売上の一部を途上国への寄付支援金とするこのプロジェクトは多くの方に想いに賛同いただき、これまで1,599万4000円(※1)が集まり、インドに学校を建てるに至った。
現地はどんな場所で、そこで人々は、どんな生活を送っているのか?
2021年10月11日の「国際ガールズ・デー」によせて、インド北東部・ビハール州における「子どもたちの教育環境改善プログラム」を担当する、国際NGOプラン・インターナショナルのアブドゥル・ジャバーさんが伝えてくれた。一緒に、遠く離れた地に、想いを馳せてーー。
心温まる地・インドのビハール州。未来に向けた、教育の重要性。
―――インド北東部・ビハール州は、どのような地域ですか?
約80%は農村で、経済活動は完全に農業に依存しています。人々は簡素な生活を送り、平和的な共存、心温まるホスピタリティ、親密なコミュニティの繋がりがビハール文化の特徴です。民謡は非常に人気が高く、一般の人の生活に根付き儀式ごとに歌われます。女性たちが歌う特別な歌もあり、「ビハリ族の結婚」という歌には温かさと活気、お祝いの気持ちが込められています。
―――プラン・インターナショナルから見て、どんな課題を抱えた地域といえるのでしょう?
まず、3〜 6歳までの子どもが通う幼稚園が不足していて、子どもたちの就園率が低いことが問題となっています。
その理由に、この地域には幼稚園があったとしても、基本的な施設や設備が不足しており、教師や女性の保育士の大部分は専門的なトレーニングを受けておらず、幼稚園の授業での子どもの対応も未熟なことが挙げられます。一方、ビハール州の人口1億400万人のうち、約40%が貧困ライン以下で生活していて、一人当たりの所得はインドの全国平均の1/3にすぎません。収入面で困窮しているだけでなく、農村に暮らす人々の大半が土地を持たず、頻発する洪水により経済活動や日常生活に支障をきたしています。
―――年代や、男女といった性別で、教育を受ける機会の差はありますか?
そうですね、女性の識字率が男性の識字率を常に下回っており、これが教育、健康、経済活動における大きな男女格差につながっています。さらに、この地域では、大部分の親たちがほとんど読み書きができません。なので、乳幼児教育の重要性を認識し、子どもが幼いうちから教育をサポートすることが難しい。その結果、ビハール州の農村部では、多くの子どもたちが就学前に必要な知識や学習態度を身に着けずに小学校に入学し、学校の環境やカリキュラムに対応することが困難です。そのため、皆さまからのご寄付の充当先として、ビハール州は優先的な対象となっています。皆さまからのご寄付は、子どもたちが幼いうちに身に着けておくべき基本的な能力や社会性や情緒面の発達を促すのに役立たせていただきます。
―――新型コロナウィルスの感染拡大は、現地にどのような影響を及ぼしていますか?
子どもや若者、特に女の子の成長や発育に根深い影響を与えています。パンデミックのため学校が閉鎖となったものの、オンライン授業を受けるという選択肢が無い状況で自宅待機の状況が続いている女の子たちは、教育を受ける機会を失うだけでなく、保護された環境や生命を守るための情報を得る手段、心理社会的なサポートを得る機会も奪われてしまいました。学校が閉鎖となったことで中途退学率が上昇し、多くの女の子たちが復学することができない可能性があります。そのため、教育におけるジェンダー格差がさらに拡大し、
女の子たちは長期的にさまざまな機会を奪われてしまうことになります。 新型コロナウイルス感染症により資源の再配分や学校閉鎖が行われた結果、弱い立場にある家族や子どもたちが通う学校や幼稚園の給食や幼児教育などの重要なサービスが中断されましたし、農村部の子どもや女の子、若い女性の大半が、経済的・社会的ストレスにさらされています。最も弱い立場にある人々や取り残された人々に長期的な影響を及ぼしてしまう懸念があり、教育においてすでに存在している格差を拡大させてしまいます。
人を美しくする最高の要素は、その人から発せられる“親切な言葉”と“許し”
―――ARTIDA OUDはドネーションを通し、これまで1599万7000円(2021年9月末時点、「インドに学校を建てるプロジェクト」で積み立てた資金900万円をふくめる)を寄付してきました。どのように使い道を決めていきましたか?
インドのプラン・インターナショナルはこの度のご寄付を、ビハール州の3つの貧困ブロックにある幼稚園に充当しました。子どもたちが質の高い乳幼児教育を受けられるような場所を作り、基本的な施設や設備を改修、建設するために使わせていただきます。プロジェクトチームは、教師や子ども、親やコミュニティの住民たちに働きかけ、保健衛生に関する意識啓発と新型コロナウイルス感染症の適切な予防のための情報提供を行うことで、地域全体の意識を高めています。
―――これまで、この地域には幼稚園はなかったのでしょうか?
これまでも幼稚園はありましたが、提供されるサービスや基本的な設備や施設の質という点では、一般的にあまり良い状況ではありませんでした。いくつかの幼稚園を除いて、支援対象のほとんどの幼稚園の施設は簡素で脆弱で、大部分には水と衛生設備が備わっておらず、屋根や壁や床が茅、竹、アスベスト/錫板、藁、泥などの簡素な素材で作られています。これらの施設は、特に夏場やモンスーン期の豪雨などの厳しい気候条件の影響を受けやすく、子どもたちに提供する教育の質にも影響を与えています。この状況は、子どもたちの将来の学習や人生に悪影響を及ぼします。
―――幼稚園ができることについて、現地の方からはどのような声が寄せられていますか?
インドのプラン・インターナショナルが行っている活動について、現地の人々は大変喜び完成を楽しみにしています。プロジェクトチームは、親や子どもたち、コミュニティ住民たちと定期的に連絡を取り合い、何度もミーティングを重ねて、水と衛生を整備することの利点や清潔なインフラの必要性、幼児教育の重要性、子どもの安全を守るための適切な行動、感染の連鎖を断ち切るための新型コロナウイルス予防の仕方などについて説明しました。地元の政府関係者や村落パンチャーヤト(自治組織)のメンバーは、現地で行われている活動をとても嬉しく思っているのです。
―――そこに通う子どもたちは、将来どのような夢を持って通うのでしょう?
生涯にわたる発育の基礎は乳幼児期(0〜8歳)に育つと言われています。最近の神経科学の研究では、幼少期の経験に基づく脳の発達が、生涯にわたる健康、学習、行動に影響を与える神経や生物学上の経路を形成することが証明されています。そのため、皆さまのご支援により質の高い乳幼児教育を受けられる子どもたちは、幼児期のさまざまな経験を通じ、自信と意欲を備えて小学校に入学できるんです。将来この子どもたちは良質な教育を受けて、自身と家族のために質の高い生活を送ることができるようになることでしょう。
―――学校は建てただけでは終わらず、運営には、まだまだたくさんの力が必要だと思います。課題に感じていること、運営していく決意などがありましたら教えてください。
ご指摘通り、質の高い支援を実施し幼稚園を建てたとしても、施設や設備を維持・継続し、子どもたちのために有効的に活用し続けるためには、幼稚園を運営するための体制を整えるだけではなく、コミュニティの住民たちや保護者の積極的な関与と支えが必要です。また、インドのプラン・インターナショナルは、ビハール州において長期的に活動しているため、本プロジェクトを実施する地域は、「子どもを主体としたコミュニティ開発」プログラムのもと、さまざまなステークホルダーの関与を通じ支援されています。そのため、政府や地元自治体との連携のもと、教師たちの能力向上に優先的に取り組みつつ、幼稚園は適切に維持管理され、今後何年にもわたり多くの子どもたちに恩恵をもたらします。
―――ARTIDA OUDは“ありのままの美しさ”をテーマに掲げています。アブドゥルさんの考える“美しさ”とは、どんなものですか?
私の個人的な意見ですが、人を美しくする最高の要素は、その人から発せられる「親切な言葉」と「許し」であり、これらはその人の心の中にある信念と美しさ両方を証明するものと考えます。
一人の人間として、日々より良い人間になろうと常に努力しています。「優しさの中の美しさ」という考えは、私が謙虚な気持ちを持ち続け自分が携わる仕事に良い成果をもたらすための大きな助けとなりました。
―――最後に、日本で、途上国が抱える社会問題に関心がある方へ、メッセージをお願いします。
先述したよう、世界にはさまざまな社会課題があります。日本の皆さまには、インドのプラン・インターナショナルが、貧しい子どもたちや疎外された子どもたち、若い女性たちのために有益な活動を展開し、インドにある主要な課題を解決するためにさらなるご支援をお願いできればと思います。

(※1 2021年9月末時点「インドに学校を建てるプロジェクト」の目標金額900万円 + インド北東部・ビハール州における「子どもたちの教育環境改善プログラム」495万300円、合計金額)
PROFILE
Abdul Jabbar
国際NGOプラン・インターナショナル(インド)所属。ARTIDA OUDが寄付をしたインド・ビハール州における 「子どもたちの教育環境改善プログラム」に携わる。
EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN
TEXT/HANAKO FUJITA
