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プロップスタイリスト・アーティスト / ケイコ・ハドソン

interview

プロップスタイリスト・アーティスト / ケイコ・ハドソン

“プロップ・アーティスト”…日本では馴染み薄い言葉かもしれない。商品やモノにスポットライトを当て、ユニークな“ブツ撮り”を追求していくクリエイターだ。ケイコ・ハドソンの手にかかると、日常で見慣れたモノが思いがけず極彩色の輝きを纏う。ARTIDA OUDのローンチパーティーで空間ディレクションを担当することが決まり、ジュエリーを主役にどんな世界が展開されるか楽しみだ(その様子は後日レポートで)。

会社員を辞めイギリス、イタリアへと身一つで渡り、日本における“プロップ・アーティスト”としての道を切り拓いてきた彼女。源にあるのは、何ごとも「楽しむ」精神だ。発言や表情にもそのモットーが滲み、出逢うみんなを強烈に惹きつけてしまうような魅力を放つ――彼女もまた、ARTIDA OUDのテーマ「raw beauty=ありのままの美しさ」の持ち主なのだ。ケイコ・ハドソンが歩んできた道を問う。

 

舞台は世界、現場は世界 

 

―――日本で会社員をされていたのを辞めて、イギリスへ留学されたんですね。

 

大学を出てから就職したんですけど、自分には会社員が向いていないと思って(笑)、1年足らずで辞めてイギリスに2年間留学したんです。ちょっと現実逃避に近い感じでした。イギリス行きは、ギャラリーも美大もたくさんあって、文化にも魅力を感じていたので決めましたね。でも突然会社を辞めると言ったら親に良い顔はされないでしょうし、大きな理由として大学院に行くことにしたんです。美術だけでなく知見を広げたくて、メディア文化論を専攻しました。

 ―――どうやってプロップ・アーティストになられたのでしょう?


向こうではおしゃれな子たちが発信しているインディペンデント・マガジンが流行っていて、そこに載っていたブツ撮りのやり方が、日本とはぜんぜん違って面白くて。観ていてこんなにワクワクするし、イギリスにはプロップ・スタイリストという職業があるんだから、日本でもトレンドが来るだろう、持ち帰りたいなと思ったのが、プロップ・アーティストを目指したきっかけでした。当時の日本のブツ撮りはコンサバティブな感じで、私は誰かのアシスタントになるのではなくて、自分のやり方でやりたいなって思いました。帰国して、一文なしだったのでまた就職して。働きながら土日に見よう見まねで作品を撮り貯め、Instagramに1日1枚載せていたんです。そしたら、海外のクリエイターさんや日本の編集者さんがコンタクトをくださって、お仕事につながっていったという感じですね。

 

『INTUITION STILL LIFE ―感覚のスティルライフ 真っ逆さまに落ちる』


 

―――そしてこんどはイタリアへ勉強に行かれたとか。

 

ネットで、素敵だなと思うイタリア人のカメラマン(Pietro Cocco)を見つけて。「私は日本でプロップ・スタイリストをやっているんです」「あなたの作品いいね」ってメールしてみたんです。彼も私の作品を面白いと思ってくれたらしくて、最近観た映画や、オススメのミュージックビデオなど、インスピレーションを受けたものをシェアし合うようになりました。彼はプロだったのですが、いつかコラボレーションしようねと言ってくれたので、思い切って「修行したいんだけど、遊びに行っていいかしら?」って2ヶ月くらいイタリアの彼の現場に入って。自分がいいなと思っていた写真ってこうやってできていたんだ!と勉強になりました。

 

―――日本と海外の違いを感じることはありましたか?

 

あまり国による違いはないかなと思っています。それよりも、あなたは誰なのか――この人はユニークな人だ、この人はパワフルな人だって、国ではなく個人同士で接していますね。つねに、舞台は世界、現場は世界だと思っているので、国による隔たりは感じませんでした。

 

 

日常にあるものを使って、非日常な世界を見せる

 

―――アイデアやインスピレーションの源はなんでしょう?
 

自分の作品で徹底しているのは、日常にあるものを組み合わせて、非日常を作ることです。私は毒づいたファンタジーや、シュールな世界観を見せたい。それって、日常にあるものを使うほうが「見たことあるものなのに怖い!面白い!」って驚きを演出できるじゃないですか。そのために、とにかく日々、周りにあるものを柔軟に見る意識をしています。スーパーに行くときも、この季節にはこの果物があるのね、あれと組み合わせれば色合いが素敵という感じで、つねに日常を観察しています。

 

『ヽ(´o`;Miracle)』

 
『ヽ(´o`;Miracle)』

 

うえの2点は、イタリア人のピエトロとやっているシリーズ『ヽ(´o`;Miracle)』の一部です。絵文字っていまや世界共通の言語じゃないですか。語学を勉強しなくても、どこの国に行っても意思疎通ができて、ある意味、奇妙だよねというところからイメージがわいて。日常に溶け込む、見たことのない絵文字の様子を演出したかったです。2016年に始めたんですけど、使った絵文字がアップデートされてなくなっているのも面白い。いろんな国を旅するプロジェクトとして、ずっと続けていく予定です。数が溜まったら展覧会もしようと話しています。


『Ikebana balance study1(2018)』

 

20代のころに草月流の生け花をやっていたんです。「基本立真型」の生け方では「真(しん)・副(そえ)・控(ひかえ)」という花材の入れ方のバランスルールがあるんですけど、それに従っておけば必ず美しい立体感が作れる。ブツ撮りは小さいスケールのなかでバランス感覚を保っているので、こういう考えは大切にしていますね。海外でも「#ikebana」など生花が流行っていますが、基本を据えていないことがあって。私は、アウトプットは海外的なやり方だけど、芯の部分は日本人が守ってきたバランスやルールを使って、日本からも海外からも面白がられるものを目指したいと思っています。

 

日本のビジュアルカルチャーを変えていきたい

 

―――ものづくりで大切にしていることはありますか?

 

とにかく、楽しむこと!楽しまないと良いものはできないと思っています。もちろんどうしようって悩むこともあるんですけど、苦労があるからこそ、最終的にイメージしたものができると「なんて楽しい1日だったんだろう!」って。私はプロップ・スタイリストですが、1枚の絵作りをしているという意識が強くて。作品でアンバランスなことをする、そのイメージまでぜんぶ共有してチームでやってみたいと思います。

 

 

―――お仕事を通じて、どんなことを伝えたいですか?

 

とてもシンプルで、日本のビジュアルカルチャーを変えていきたいですね。ロンドンで、同世代や巨匠、活躍しているプロップ・アーティストがたくさんいて、作品にも日常的に触れられるんです。日本は強烈なものをセーブする力が働いたり、控えたりするところがあって、安心だけどもっと目に入るものを面白くしたいなって思います。


『INTUITION STILL LIFE ―感覚のスティルライフ ひそひそ』


『INTUITION STILL LIFE ―感覚のスティルライフ 泣き崩れる』

  

―――今後チャレンジしたいことや、夢はありますか?

 

3つあるんですけど、いいですか(笑)?1つは、オリンピックのお仕事!オリンピックが日本で開催されるときに、健康で働けて、チャンスにも恵まれているなんて、とてもラッキーなことです。ロンドンで、オリンピックが行われる街はクレイジーになるって身をもって体験しているので、せっかくだからあの賑わいにお仕事でも関わりたいです。

2つ目は、写真家の安村崇さんとお仕事がしたい。『日常らしさ』(2005)のシリーズが特に好きです。色や光、空間と余白、モノのバランスが、それ以外にない“究極”の静物写真ばかりで、私が目指していることをすべてやられている方です。美術館で大画面で見てもやっぱりすごくて。1ヶ月くらい仕事を休んで、安村さんの視点、被写体や場の捉え方などを、もちろん撮影風景も含め近くでお仕事を見せていただきたいくらいです。どうやってるのかなって。

3つ目は、いまは商品ありきのお仕事が多いのですが、メッセージやコンセプトを伝える案件をやってみたいです。ミュージシャンのCDジャケットとか。ディレクションからキャスティングまでしたいですね。




人との出会いによって成長する

 

―――このブランドは「raw beauty=華美に飾らない、ありのままの女性の美しさ」をテーマにしています。内面の成熟も、人の魅力を引き出す大きな要素ですが、KEIKOさんの大切にされている考え方や言葉を教えてください。

 

まず、アートは自分を作っているものですね。日常生活でなかなか押されないスイッチを押されるから、感動、学び、気付きがあって…私を成長させてくれたと思います。あとはずっと、状況がどんなに変わっても響いている言葉があって。中・高の校長先生が掛けてくれた、「人は人と出会って人になる」という言葉です。オオカミ少年は狼に育てられたから、体は人間でも能力や心が人間とはかけ離れてしまった。同じように、あなたは出会う人たちによって育てられ、作られていくのよっていうメッセージですね。この言葉を思い出すと、チームにも感謝の気持ちがわいてきます。

 

 

―――ARTIDA OUDで気に入ったアイテムを教えてください。

 

私、ピアス、指輪、ブレスレットが大好きなんですけど、価格も手頃で、これだけバリエーションがあるのはすごく便利ですよね。ECで手に入るのも素敵。お店でピアスだけを探してもなかなかまとめて見られないので、ネットでジュエリーが見られれば良いなと思っていたんです。四季折々で変えられますし、ギフトにもぴったり。ピアスやリングをたくさん重ねるレイヤードがしやすいので、ジュエリーを楽しむ女性が増えそうだと思います。華奢でかわいいものになかなか出会えないので大柄なものを身に着けてしまっていたんですけど、ちょっと毒っ気がありながら繊細なヘビモチーフもあるし、このブランドならば好きなものに出合えそうです。



―――さまざまなフィールドで頑張る女性たちへ向けたメッセージをお願いします。

 

とにかく毎日を楽しんで!楽しんでいると、みんなが近寄ってきてくれるし、助けてくれます。この人といると元気をもらえる、楽しいことがありそうと思ってもらえるから。仕事では緊張することもあるけれど、その緊張は、興奮やワクワクの裏返し。それもまた楽しんで欲しいですね。

 



 

 

 

PROFILE

KEIKO HUDSON



プロップ・スタイリスト、アーティスト。ファッション、コスメティックス、フードに特化したスティルライフビジュアル制作のディレクション、セットデザイン、プロップ・スタイリングを行う。広告や雑誌のほか、企業等のソーシャルメディア向けビジュアルのディレクションおよびスタイリングを手がける。日常生活にありふれたプロップス(小道具)を用い、モノとモノの組み合わせ方や配置のバランス構成に独自の感覚で変化を持たせることで、ほかにはない非日常的な世界観を作り上げている。
https://www.instagram.com/tablebykeikohudson/?hl=ja



PHOTOGRAPHER/SHIORI IKENO

EDIT/RIDE MEDIA&DESIGN TEXT/HANAKO FUJITA








(上から)
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(右手)
参考商品

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